第148章

『君の好きな店、予約しておいたんだ。たまには息抜きしない?』

電話の向こうから届いた岸江立人の穏やかな声は、気遣いに満ちていた。

宮原知子は張って痛む眉間を指で揉み、申し訳なさそうに早口で答える。

『すみません、先輩。こっち、まだ片づいてない仕事が山ほどあって……今日はどうしても無理です。今度、今度は私がご馳走します』

『わかった。無理するなよ。ちゃんと休め』

岸江立人は無理強いせず、ただデスクの奥で細長い目をわずかに細めた。そこに、言葉にしない含みが滲む。

そして、その頃。

長川グループのオフィスフロア。

午後の陽が、床まで届く大きな窓からさらりと差し込んでいた。

葉山歩...

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