第15章

宮原知子は靴を履き替える手を止めない。彼のほうを一度も見上げず、そのまま階段へ向かった。

完全に無視する態度に、長川輝夫の胸に溜まり続けた苛立ちは、一晩分まとめて決壊した。

「待て。俺の話が聞こえないのか」

声は低い。嵐の前触れみたいな危うさを孕んでいた。

宮原知子はようやく足を止め、横目で彼を見た。視線はまず、自分の手首を掴む男の指へ落ちる。次いで、彼のそばに腰を下ろし、ゆっくりと目線を持ち上げて、陰った瞳を真正面から捉える。

「聞こえてる」波のない声だった。「それで?」

――それで?

長川輝夫は、その一言で怒りが笑いに化けそうになった。

「宮原知子、おまえ……いい度胸だな...

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