第188章

幼稚園を出ると、長川直志は小さな手で宮原知子の指をぎゅっと握りしめたまま、道中ずっとおしゃべりが止まらない。小さな口で「ママ」を連呼する声は、ぱきっと澄んでいて、甘い。

「ママ、明日もクッキー持ってって、みんなにあげる!」

「ママ、夜は一緒に寝たい。おとぎ話、読んで」

宮原知子はそのたびに「うん、うん」と応えた。胸の奥がじんわり甘くて、同時にひりつく。砂糖衣をまとった苦い薬を、そっと懐に忍ばせているみたいだった。

ぴょんぴょん跳ねるように歩く小さな背中を見下ろすたび、目の奥が熱くなるのを堪えられない。

この子は、彼女の子だ。

命がけで産んだ、血のつながった子。

それなのに――母...

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