第27章

またしても、長川家の体面――。

宮原知子は口の端をわずかに引きつらせ、それ以上は言い争わなかった。

この男に道理を説いたところで、無駄だ。牛に経文を聞かせるようなものだと、彼女はよく知っている。

「じゃあ、家政婦さんを雇います。私のほうで信頼できる人を」

一歩引く。けれど、ここだけは譲れない一線だった。

長川輝夫は、珍しく即座に否定しなかった。

車がカーブを曲がり、光と影が彼の顔をなぞる。ゆっくりと目を開け、深い沼のような双眸を宮原知子へ向けた。値踏みするような視線。

「好きにしろ」

宮原知子はそれ以上口を開かず、スマホを取り出して小岩青子へそのまま発信した。

呼び出し音が...

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