第32章

宮原知子にははっきり見えた。周防おばさんの瞳の奥に、怯えが浮かんでいる。

心配をかけたくないのだろう。けれど、宮原知子は知っている。周防おばさんの性格なら、ただの擦り傷程度でこんな顔はしない。

「周防おばさん……本当のことを言ってください」

宮原知子はそっと手を握った。

周防おばさんは一瞬ためらい、それから小さく息を吐く。

「健治さんがね……現場で、落ちてきた鉄筋に脚をやられたの。お医者さまは、何か月も安静が必要かもしれないって……元通りになるかも、まだ……」

声は次第にか細くなり、目尻に涙が滲む。

「あの現場、普段は安全管理もしっかりしてるのに……今回だけ、どうして……」

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