第103章

渕上純が悪趣味な悪戯を仕掛けてくる様子を見ても、神原文清は腹を立てるどころか、無意識のうちにこの女を愛おしいとさえ感じていた。彼は腕の中にいる女を見下ろした。ふと、何かに取り憑かれたように唇を重ねたいという衝動が脳裏をよぎる。

彼女の手がそっと彼の顔に触れ、ゆっくりと上下に滑る。艶やかな黒髪が彼の肩にさらりと散らばり、その華奢で柔らかな肢体がぴたりと彼に寄り添う。わずかに吊り上がった美しい瞳には、男を誘うような色が宿っていた。

男は彼女の腰を強く抱き寄せた。

「渕上純、何をする気だ」

「別に? ただ神原社長を試してみただけです……いいえ、風見紬さんの代わりに試して差し上げた、と...

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