第106章

「そうそう、先生うっかりしてたわ。危うくあなたたちに悪いこと教えちゃうところだった」

渕上純は冗談めかして言い、二人の子供の間の空気を和ませた。

神原悠は癇癪持ちではあるが、物事のけじめはつけられる子だ。彼は乱暴に涙をぬぐうと、ぽつりと口を開いた。

「うん……じゃあ、先生、これからもうちによく遊びに来てくれる? 実は……僕、先生のこと結構好きなんだ」

その言葉に、渕上純の目元がじわりと赤くなる。胸の奥に温かいものが込み上げ、周囲の空気までもが優しさで満たされていくようだった。

渕上純は小林香理越しに手を伸ばし、彼の頭を撫でた。その瞳は優しさを湛えている。

「もちろんよ。も...

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