第110章

神原文清にそう指摘され、渕上純は自分の恰好——あの扇情的で露出の激しい衣装——を見下ろした瞬間、頭が真っ白になった。直後、彼女は悲鳴を上げる。

「嘘でしょ! 何これ! 神原文清、この人でなし! 別れたのにまだ私を嵌める気!?」

「俺は今帰ってきたばかりだ」

「誰が信じるのよ! ここはあんたの家でしょ、あんた以外に誰がこんなこと……」

言いかけて、渕上純はハッとした。

脳裏に神原お婆さんに牛乳を勧められた場面が浮かぶ。悠くんへのピアノの指導と合わせて考えれば、すべてが繋がった。刹那、渕上純は事の次第を悟った。

彼女は信じられないという顔で呟く。

「まさか……お祖母様が……」

そ...

ログインして続きを読む