第115章

渕上純の白皙の頬は、怒りのあまりほんのりと紅潮していた。ぷくっと膨らませたその頬は、まるで左右に小さな鞠を含んでいるかのようで、触れれば弾けそうなほど瑞々しく、どこか愛嬌を感じさせる。

酔いの回った神原文清は、そんな渕上純の様子を淡々とした視線で追っていたが、その瞳の奥には隠しきれない優しさが滲んでいた。

「悪いわね、小林海。見苦しいところを見せちゃって。彼が来たなら、私はもうお邪魔でしょうから、先に休ませてもらうわ」

そう言い捨てて、渕上純は荷物を取るために二階へ上がろうと踵を返したが、神原文清の一言がそれを引き留めた。

「俺がいて何か問題でも? 別にお前に会いに来たわけじゃない」...

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