第118章

電話はすぐに繋がった。神原文清が口を開くよりも早く、受話器の向こうから鈴木真子の媚びた声が響いてくる。

「神原社長、ご無沙汰しております。今日はお時間おありなのですか? よろしければお食事でもいかがでしょう。D市で一番の空中庭園なんて」

鈴木真子のこうした厚顔無恥な振る舞いに、渕上純はとっくに慣れきっていた。嫌悪感こそあれど、それすら今は薄れ、ただ無関心なだけだ。

だが、神原文清もまた、彼女への牽制を忘れない。

「結構だ。あんな場所は何度も行っているし、飽きている。それより、明日はあんたの誕生日だったな。ちょうど渕上純も暇だそうだから、一度会うことを許可してやろう」

電話の向...

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