第287章

渕上純は氷のように冷たい表情を浮かべ、全身から不機嫌なオーラを放っていた。どうやら風見紬という女は、何度言っても懲りないらしい。

先刻、彼女は姫野雅人と出てきた際に、警察への通報を取り下げてしまっていた。

旅先ということもあり、渕上純としても事を荒立てたくはなかったのだ。

だが今、彼女は激しく後悔していた。こんなことなら取り下げるべきではなかった、と。

「風見紬、また頬を張られたいの? 望み通りにしてあげましょうか」

渕上純は無表情のまま彼女を凝視した。その眼光だけで、風見紬に恐怖を植え付けるには十分だった。

風見紬の表情が強張り、無意識のうちに一歩後ずさる。

その横で、楓田麻...

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