第291章

本来なら事前に連絡を入れるべきだったが、スマホを取り出した手を止めた。これは神原文清が趣向を凝らして用意した演出だ。無粋な真似をして、彼の顔を潰すわけにはいかない。

そう思い直して、渕上純はギフトボックスを開けた。目に飛び込んできたのは、鮮烈な赤のオフショルダー・マーメイドドレス。普段はモノトーンや寒色系を好む彼女にとって、これほど艶やかな色を身に纏うのは初めてのことだった。

新婚だから、ということだろうか。彼なりの変化の求め方なのかもしれない。

着替えを済ませ、姿見の前に立つ。オートクチュールのドレスは彼女の肢体を完璧に縁取り、深紅の生地が陶器のような肌の白さを際立たせていた。

我...

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