第73章

浴室からは木村社長がシャワーを浴びる水音が聞こえてくる。一方、渕上純の瞳はすでに潤み、虚ろになりかけていた。全身から力が抜け落ち、今の彼女は必死に意識を繋ぎ止めているだけの状態だ。しかし、それは酷く困難な作業だった。何度も深い眠りの底へ引きずり込まれそうになる。

四肢は痺れ、顔は火照り、体中が灼熱に焼かれているようだ。金縛りよりも遥かに苦しい感覚。

渕上純は泣き叫びたいほどの焦燥感に駆られた。

その時、浴室のドアが開いた。腰にバスタオルを一枚巻いただけの木村社長が、口元を歪に歪めて笑っている。天井を向いたその鼻の穴は、まるで引っくり返った豚そのものだ。

渕上純は必死にベッドの端へ縮こ...

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