第75章

「部屋を探していただくのは構いませんが、家賃は自分で負担します。ただ、少しお安くしていただけると……手持ちはこれだけで、今はまだ収入もありませんので」

「ああ、いいだろう。いや、いっそマンションを一室、譲渡してもいい。俺は確かに、お前に悪いことをしたからな」

神原文清は冷淡さと複雑さが入り混じった表情を浮かべていたが、その言葉に嘘偽りはなかった。

渕上純は唇を引き結んだあと、神原文清に向かって眉を上げた。

「分かりました。そちらから進んでくださると言うのなら、断る理由はありませんね」

神原文清は渕上純のその反応にも少しも驚かず、淡々と頷いた。

「当然受け取るべきだ。今後、お前のこ...

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