第80章

鈴木真子は猫なで声で善意を装った。

「叔母さんは純ちゃんのことが心配なのよ。神原社長が婚約するって聞いて、もう心臓が止まるかと思ったわ。でも、この件で純ちゃんを責めたりしないから安心して。最初、誰かから『神原社長の想い人は誰も代わりになれない唯一無二の高嶺の花だ』って聞いたときは信じられなかったけど、まさか本当だったなんてね」

鈴木真子の言葉に、渕上純は眉をひそめた。

「叔母さん、今さらそんな話をしても無意味でしょう?」

「純ちゃん、叔母さんが言いたいのはね、例えその高嶺の花が戻ってきて、二人が結婚することになったとしてもよ? 神原社長が家をくれたり、援助してくれたりするなら、それは...

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