第85章

渕上純は不意を突かれ、口ごもるように言葉を濁した。

「私の英語力なんて、それほどのものでは……」

「渕上さん、謙遜はなしですよ。以前あるイベントであなたの流暢な英語を拝見しましたし、成績もトップクラスだったはずです。家庭教師の職務を全うする実力は十分にあります。相場なら一コマ八千円前後、月にして二十四万といったところでしょう。そのうち十四万をお支払いして、残りをマンションの差額分として少しずつ充当していくというのはどうですか?」

小林海の口調は、温和で親しみに満ちていた。

二人にとって、これは決して悪い取引ではない。今の部屋にこれ以上住み続けたくない渕上純にとっても、渡りに船の話だ。...

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