第97章

小林香理を寝かしつけた後、渕上純は忍び足で部屋を出て階下へ降りた。案の定、小林海はまだ起きており、部屋着に着替えてリビングのソファで資料に目を通していた。

「あなたが起きていると思ったから、香理ちゃんを寝かしつけてすぐに降りてきたの」

渕上純はソファに腰を下ろした。

小林海は金縁の眼鏡を外し、眉間を揉みほぐす。

「何度か上がろうかと思ったんだが、香理ちゃんが君に癇癪を起こしているんじゃないかと心配でね」

「そんなことないわ。香理ちゃん、私の前ではとても聞き分けがいいもの。さっき言ったことも全部聞いてくれたし」

渕上純は微笑み、さらに言葉を継いだ。

「どうやらお兄さんは、自分の妹...

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