第106章

  その頃の神崎飛鳥は、まだ知らなかった。

  向こうで――現場監督と不動産会社の責任者たちが五階まで上がり、部屋の中を覗いた瞬間、そこに冷えきった棺が一つ、どんと据えられているのを目にしてしまったことを。

  腰が抜けたように足が震え、気を失いかける。思わず目をこすり、「見間違いだ」と自分に言い聞かせた。だが、どう否定しても現実は変わらない。

  ――部屋の中に、棺がある。

  「う、うそだろ……!?」

  五、六人の一行は、真昼間だというのに背筋にぞわりと寒気が走り、冷や汗が背中を伝ってシャツを濡らした。

  互いの顔を見合わせ、瞳に浮かぶのは露骨な恐怖。ついに堪えきれず、悲...

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