第138章

 一行は、どこに潜んでいるとも知れないイノシシのことはひとまず放っておき、余計な事故を避けるためにも先に下山しようと決めた。足取りは自然と速くなる。

 ――だが、喜ぶのが早かった。

 数分も進まないうちに、背後から「フン、フン、フン……」という鼻息が、さっきよりもはっきりと迫ってきた。

 安倍晴明たちが振り返った瞬間、顔色が沈む。

 闇の中から、五、六頭はいるだろうか。大柄で筋肉質なイノシシが、地を蹴って突進してきた。硬そうな毛並み、長い鼻先、全身は夜の黒に溶けるほど黒々としている。気を抜けば見落としてしまいそうなほどだ。

 普段なら一頭に遭うだけでも珍しいのに、今夜は群れで来た。...

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