第152章

  倉中は、その陰気な声を耳にした途端、腹の底からむかっ腹が立った。だが同時に、背筋が凍るほど怖くもなる。長髪の女の手口は、身をもって知っている。凶暴で容赦がないだけじゃない。冷たくて、欲深い。とびきり厄介な女だ。

  心臓がひゅっと縮み、逃げ出したい衝動に駆られる。けれど隣で、じっと自分を見つめてくる松波幸延の視線が刺さった。

  ここで尻尾を巻いて逃げたら、幸延の前で格好がつかない。面目丸つぶれどころか、こいつは俺に本気じゃない、と見限られてしまう。そうなれば、ますます拒まれるだけだ……。

  倉中は逡巡した。

  とはいえ、今はエレベーターの中だ。長髪の女は入ってこられない。そ...

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