第196章

馬渡の家は玉泉村の外れ、橋を渡った向こうにあった。彼は今年で八十。ふだんはちょっとした持病があるくらいで、動けるし食べられるし、身体つきもまだまだしゃんとしていた。家族も「この調子なら百まで生きるよ」なんて言っていたのに――ある朝、馬渡はいつまで経っても起きてこなかった。

いつもなら、とっくに起きて朝飯まで炊いている時間だ。なのに、その日は物音ひとつしない。おかしいと思って家族が部屋を覗くと、馬渡の身体はもう冷え切っていた。

馬渡は、そうして死んだ。あまりにも唐突で、誰ひとり心の準備もできていない死だった。

子どもたちは悲しみを噛み殺しながら葬儀の段取りを進めた。八十での大往生なら、い...

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