第22章

桐生家は、ほとんどひっくり返る勢いだった。桐生大地が誘拐されたという知らせが入ってからというもの、家の中に静けさが戻った瞬間など一度もない。大地の所属事務所の人間も、警察の人間も次々と押しかけ、誰もが張りつめた顔で動いている。

桐生家は最速で3億をかき集め、事務所も2億を持ち込んだ。夜が明け次第、犯人と交渉に入る手筈だ。

何より優先すべきは、桐生大地の身の安全だった。

母の桐生恵子は、泣き腫らした目のままソファに力なくもたれかかっている。ほんの少し物音がしただけでびくりと起き上がり、「大地が帰ってきたの?」と尋ねる。そのたびに桐生隆志はため息をつき、妻の背を軽く叩いて言い聞かせた。

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