第74章

  もし一人だけが「幽霊を見た」と言ったのなら、頭がおかしいと笑われて終わるかもしれない。だが、同じことを口にする人間が増え、しかも恐怖で悲鳴まで上げ始めたら――その瞬間、機内に不安と怯えが伝染する。

  中年女性の「幽霊騒ぎ」からそう間を置かず、立て続けに二人が「顔を見た」と言い出した。ひとりは機内食の弁当の中に、もうひとりは映画を観ている最中だという。隣の彼女に何か声をかけ、ふとスクリーンへ視線を戻した途端、画面いっぱいに人の顔が貼りついていたらしい。しかもそいつは、喉を締め上げられた人間が漏らすみたいな、甲高く細い笑い声まで立てたのだと。

  その一瞬で、二人は頭が真っ白になった。...

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