第83章

 安倍晴明はまず、赤い紐を寺に戻して処置に回した。それから病院へ向かう。乗客三百人余りは平均してC市の五つの病院に振り分けられ、除霊師である彼らもそれぞれ担当の病院を受け持つことになっていた。

 その中でも、顔盗りに憑かれた者たちは状態がとりわけ悪い。深刻な低酸素で、いまだ意識が戻っていない者が数人。ほかは幽霊の気に侵されて気を失っただけで、擦り傷と過度の恐怖以外は大事に至っていなかった。

 佐藤直人は、負傷者の中でも最重症だろう。二度も顔盗りに取り憑かれたのだ。一度目は口の中に入り込もうとされ、二度目は顔を奪われた。意識は戻らないまま、寝言だけが途切れない。口の奥で「あ、あ……う、う…...

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