第92章

  神崎飛鳥と本田優は、日が落ちてから山へ様子を見に行くつもりで支度をした。民宿を出るとき、飛鳥はわざわざ玄関先を確認する。自分が捨てた人形が――ない。どこに放り込まれたのか、それとも。

  本田優が眉をひそめる。

  「触っちゃダメって言ってたじゃん。誰が捨てたんだよ」

  「さあ。……自分でどっか行ったのかも」

  「……」

  やめてくれ。こんな時間に、そんなこと言うな。

  ふたりが山の麓まで歩くと、巡回中の警備隊に止められた。近ごろは物騒で、村は夜の入山を厳禁にしている。これ以上、厄介事を増やしたくないのだ。

  「帰れ。何の冒険だ。夜は危ねぇぞ、命いらねぇのか」

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