第100章

そう言いながら、彼女はクラッチバッグから何かを素早く取り出し、私の手のひらへねじ込むように押し込んだ。

新品のスマホだった。機種も色も、ケースに至るまで――以前、叩き割られた私の端末とまったく同じ。

「中に入ってるのは、私の連絡先だけ。通信は全部暗号化してある。落合睦生が分解したって、何も掴めない」

六条莉々は声を極限まで落とし、早口で畳みかける。

「いい? よほどのことがない限り、こっちからは連絡しないで」

私はスマホを握り締めた。

「分かった」

六条莉々が去っていく足音は驚くほど軽い。回廊を撫でていく一陣の風みたいに、すっと消えた。

私は個室に一人、長いこと座り込んだ。張...

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