第103章

鏡の中の女は、顔色こそ青白いのに、眼差しだけが刃みたいに冷たかった。

法律事務所からの解雇。マンションの荒らし。落合睦生の脅し。

全部が私を水底へ沈めようとしている。

――でも、立ち止まれない。

マンションのエントランスを押し開けた瞬間、背中に貼りつくような視線が全身を舐めた。

振り返らない。トレンチコートの前をきゅっと寄せ、まっすぐ地下鉄の駅へ向かう。

その日、私は規模の小さな法律事務所をいくつも回った。

けれど履歴書を差し出すたび、相手の目は「松崎莉緒」の文字に触れた瞬間、最初の好意から露骨な拒絶へと変わる。

「松崎弁護士。能力は疑っていません。ただ……うちは小さな事務所...

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