第43章

電話口から必死な懇願が流れ込んできて、反射的に切ってしまいそうになる。けれど理性が、それを押しとどめた。

「……話すことなんてないわ」

自分の声は、驚くほど冷えていた。

プルトン区の、あの狂ったように突っ込んできたトラック。今にも私を押し潰しそうだった巨大な影。――脳裏に焼きついたまま、消えない。

落合家への憎しみは、底が知れなかった。

「松崎莉緒。お前が俺を……落合家を憎んでるのは分かってる」

受話器の向こうの落合睦生は、いつもの尊大さも傲慢さも剥がれ落ちていた。残っているのは濃い疲労と掠れた声だけ。牙を抜かれた獣みたいに、弱々しい。

「でも、これは六条修介のことだ。……それ...

ログインして続きを読む