第5章

琉生視点

 彼女は知ってしまった。全てを知ってしまったのだ。

 震える手で、協議書のページを狂ったようにめくる。並んだ文字の一つひとつが、ナイフとなって心臓を抉り取っていく。

 財産分与の欄、彼女の要求は何もなかった。家も、貯金も、車も。全て「放棄」と記されている。

 彼女が求めたのはたった一つ。怜央の親権だけだった。

 俺は病室を飛び出し、通りがかった看護師の腕を掴んだ。

「怜奈は……神崎怜奈はどこだ!? 俺の息子はどこにいる!」

 看護師は悲鳴を上げかけ、後ずさりしながら記録を確認する。

「患者様は……三時間前に転院手続きを済ませて退院されました」

「どこの病院だ!」

...

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