第7章

渋谷のシェアオフィスの廊下で、私はノートパソコンを片付け、帰る準備をしていた。

ガラス壁の向こうでは、東京の夕陽がゆっくりと高層ビルの間に沈み、鉄のジャングルを暖かい金色に染め上げている。

指先でそっとパソコンの表面を撫でると、久しぶりの達成感が込み上げてきた。

プロジェクトの報告会が終わったばかりで、私と大衛が持ち帰ったシリコンバレーの技術理念を皆が絶賛してくれた。

帰国して半年、すべてが良い方向へ向かっている。私のコードはついに価値を持ち、私のデザインは認められ、私の人生は再構築されつつあった。

「千絵子……」

背後から、聞き慣れた声がした。私の足は思わず止まり、...

ログインして続きを読む