第7章
藤井英介が入ってきたのは、ちょうどその時だった。
可哀想に震えながら泣いている水野月を見るや、彼は考える間もなくテーブルの上の水を手に取った。
氷のように冷たい水が、私の頭頂から浴びせかけられ、髪を伝って襟元へと流れ込む。
「まだ騒ぎ足りないのか?」
彼の声は、まるで冬の雪のように冷ややかだった。
私は思わず身震いした。それは冷水のせいだけではなく、この光景があまりにも見覚えのあるものだったからだ。
初めて藤井英介に連れられてビジネスパーティーに参加した時、私は緊張のあまり、ある人の上着に酒をこぼしてしまった。
その時も藤井英介は、今と同じように平然と、冷ややかに...
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