第9章

 彼の手が再び伸びてくる。

 私は壁際まで後ずさった。だが、エイドリアンの手は私の肩に触れた。

 その瞬間、強烈な吐き気が込み上げた。

 制御不能な、純粋な本能。細胞の底から拒絶の悲鳴を上げているようだった。

「触らないで!」

 思い切り彼を突き飛ばし、その腹に膝蹴りを叩き込む。彼が二歩たたらを踏んだ隙に、私は部屋の反対側へ駆け込んだ。

 胃袋が激しく波打つ。床に膝をつき、私は激しくえずいた。

 何も吐き出せないのに、痙攣が止まらない。

 遠くからエイドリアンの声が聞こえた。

「アイリス?」

 近づこうとする気配に、私は即座に手を突き出す。

「来ないで!」

 自分のも...

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