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第15章 - 嵐

温かい腕に包まれているのを感じた。力強く、温かい腕だ。甘いバニラと土のようなスパイスの芳醇な香りが鼻腔を満たす。何よりも安らぎを与えてくれる音が、耳元で響いていた。それは誰かの力強い心臓の鼓動だった。まばたきをして目を開けると、アルファ・ルーカスが私を抱きかかえて五番街を歩いているところだった。

彼は私をどこへ連れて行こうとしているのだろう。おそらく、誰にも邪魔されない場所で私を殺すつもりなのだ。私が顔を上げると、彼はこちらが目覚めたことに気づいた。それでも私を下ろそうとはせず、歩き続けた。私が身をよじって降りようとすると、彼はさらに強く抱きしめてきた。

「大丈夫だ、も...

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