52

第八章――アギストリ島

私は遅刻しそうだった。ベッドから飛び起き、バスルームへ駆け込んで髪をとかし、歯を磨く。本当はポニーテールにしたかったけれど、トップの髪だけをクリップで留めるハーフアップにした。うなじにある三日月の形の痣(あざ)を誰にも見られたくないから、ポニーテールにすることはめったにない。私は「クレセント・ムーン・パック」の出身だから、パックのタトゥーだと言い逃れできるかもしれないけれど、誰かがそれを「ギフテッド・ウルフ」の印だと気づく可能性がないとは言い切れないからだ。

ターコイズブルーのビキニを着て、その上から黄色いサンドレスをまとい、サンダルを履く。バックパックを掴み、タオ...

ログインして続きを読む