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第十章 ディミトリ

ディミトリ視点

俺が何よりも望まなかったもの、それは「番(つがい)」だ。もし番を見つけたら、拒絶してやる。ずっとそう決めていた。もし絆の引力が強すぎて拒絶できないなら、誰かに命じて殺させればいい。そんな馬鹿げたことは、それで終わりだ。

母が連れ去られ、拷問を受けた時、父は正気を失った。アルファにとって番とは、足手まといであり、身を滅ぼしかねない弱点だ。俺たちはそれを、父の姿を通して目の当たりにした。俺の鎧に、番という名の綻びを作るわけにはいかないのだ。

だが、その時は訪れた……彼女は踊りながら、俺の人生に飛び込んできたのだ。

クラブで彼女を見た瞬間、俺の内なる狼―...

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