第3章

 頬がひきつり、自分でも見覚えのない、硬くて不自然な笑みが漏れた。

「大丈夫」

 ジュリアンは一瞬、きょとんとした。

 私がこれほど物分かりが良いとは、思ってもみなかったのだろう。なんせ以前の私なら、記念日に遅刻でもしようものなら、泣き喚いて大騒ぎするような女だったのだから。

 だが、彼はすぐに安堵の表情を浮かべた。

「チームが高地での強化合宿でスイスに行くことになったんだ。もう行かないと」

 また嘘だ。

 昨夜、アレクサンドラがインスタグラムで、サンモリッツにある豪華なスキーリゾートをフォローしたばかりだというのに。

 彼の言う「強化合宿」など、その「光」とロマンチックな休暇を楽しむための口実に過ぎない。

 その時、再び下腹部に激しい痙攣が走った。

 私の顔色は一瞬にして蒼白になった。

 本能的に震える手を伸ばし、ジュリアンの袖を掴む。

「ジュリアン……行かないでくれないかな? 本当に具合が悪くて……すごく怖いの」

 ジュリアンは足を止めた。そして、彼の袖をきつく握りしめている私の手を見下ろした。

 その瞬間、彼の瞳にわずかな躊躇いがよぎった。

 だが、次の瞬間――

 アレクサンドラの専用着信音が、けたたましく鳴り響いた。

 そのわずかな躊躇いは、確固たる決意によって一瞬にして掻き消された。

 彼は素早く電話を切り、私の腕に絡みついた指を、一本一本力任せに引き剥がした。

「大げさにするなよ、リジー」

「運転手に病院まで送らせる。今回の合宿は俺にとって極めて重要なんだ。もっと大人になれよ」

 玄関のドアが重い音を立てて閉まり、すべてが終わった。

 私の中に宿っていた小さな命は、この男に対する最後の幻想とともに、正式に死を宣告されたのだった。

「稽留流産ですね」

 医師の言葉には一切の温もりがなく、まるで裁判官が判決を読み上げるかのようだった。

 私は手術台に横たわり、手術灯の光の輪を見上げていた。

 涙は出なかった。

 パニックに陥ることもなかった。

 体内に形成された血の塊が取り除かれた時、ジュリアンが私の人生に残した最後の痕跡も、綺麗さっぱり消え去った。

 空っぽの別荘に戻ったのは、夜も更けた頃だった。

 弱り切った体を引きずり、クローゼットの奥底から、長い間隠していた段ボール箱を引っ張り出した。

 中には、私たちの未来の赤ちゃんのために用意したプレゼントがぎっしりと詰まっていた。

 淡い黄色のアヒルのロンパース、小さな靴、そしてジュリアンを喜ばせるためにわざわざ買った、ミニチュアのレーシングカーの模型。

 暖炉の前に座り、マッチを擦った。

 五年間分の思い出を、それらのベビー用品とともに、すべて火の中へと放り込んだ。

 それらが灰に変わっていくのを、私はただじっと見つめていた。

 涙が頬を伝って口の中に流れ込み、しょっぱい味がしたけれど、私は笑っていた。

「真実の愛」のために母親と縁を切ったあのリジー、逃げるために家族を捨てることも厭わなかったあの愚かな女は、もう死んだのだ。

 彼女の跡を継ぐのは、ホイットモア家の冷酷無比な後継者、エリザベス・ホイットモアだ。

 かつて私は、悲しみに暮れながらジュリアンを抱きしめ、無邪気にこう尋ねたことがある。「ねえ、ジュリアン。あの女があなたの家庭を壊した時から……あの女にもすべてを失う絶望を味わわせてやりたいって、思ったことはないの?」

 あの頃の私には、ジュリアンの瞳の奥に潜む嘲笑の深さが理解できていなかった。

 だが、今は分かる。

 彼はそんなことを考えていただけでなく、実際に行動に移していたのだ。

 彼は丸五年という歳月をかけ、偽りの愛情で私に恋という名の甘い夢を編み上げた。

 すべては、幸せの絶頂にいた私をどん底に突き落とし、私の母、キャサリンに最も残酷な打撃を与えるために。

 だが、彼には一つだけ知らないことがあった。

 あの上の世代の遺恨において……

 彼の母親であるマデリンこそが、他人の夫婦関係を破壊した、淫らで奔放な愛人だったという事実を。

 私は一枚のメモを取り出し、それを中絶手術の報告書と一緒に黒い封筒に入れた。

「ジュリアン、これはあなたに相応しい贈り物よ」

 五日後、ジュリアンから電話がかかってきた。

「リジー、俺が送ったあのドレスを着て、今夜の『スターライト・チャリティーガラ』に遅れずに来るんだぞ」

 私は携帯電話を握りしめ、空港の巨大なガラス窓の前に立っていた。

「分かったわ」

 私は静かに答えた。

 電話を切った後、SIMカードを抜き取り、ゴミ箱へと放り投げた。

 搭乗を促すアナウンスが響き渡る。

 私はスーツケースのハンドルを引き、一度も振り返ることなく保安検査場へと歩を進めた。

 さようなら、ジュリアン。私が無駄にした五年間の愛。

 ホイットモア家主催のチャリティーガラは、スターたちの輝きに満ちていた。

 完璧に着飾ったジュリアンは、二階のテラスに立っていた。

 彼はグラスのシャンパンを揺らしながら、メインテーブルに座る優雅で気高い女性――私の母、キャサリンを鋭い視線で睨みつけていた。

 今夜、彼はあの女の仮面を剥ぎ取るつもりだった。

 彼の描いたシナリオ通りなら、私は彼が選んだドレスを身に纏い、従順な操り人形のように入り口に姿を現すはずだった。

 そして彼は、私の母の名誉を失墜させるであろう「スキャンダル」を公の場で暴露する。

 母娘の仲を引き裂き、ホイットモア家の名声に泥を塗るのだ。

 重厚な扉がゆっくりと開く。

 スポットライトがプログラム通りに動き、会場中の視線が入り口へと集まった。

 ジュリアンの笑みは一層深くなり、彼は意気揚々と階段を下りていった。

「皆様!」

 彼の声は朗々と響き渡り、抑えきれない興奮に満ちていた。

「ご紹介させてください……」

 しかし、光がその人物の姿を完全に照らし出した瞬間、ジュリアンの顔に浮かんでいた笑みが凍りついた。

 入ってきたのは、私ではなかった。

 アレクサンドラだったのだ。

 彼は礼儀も何もかもを忘れ、冷静さを失い、階段を駆け下りた。アレクサンドラが差し出した手など見向きもせず、一直線に私の母の元へと向かった。

「エリザベスはどこだ!」

 ジュリアンの声は怒りで嗄れ、双眸は血走っていた。「あの女、よくも顔を出さなかったな! あんたが隠したのか!」

 周囲の客たちがざわめき始める。

 カメラのフラッシュが狂ったように焚かれ、この新進気鋭のカーレースの王者が取り乱す瞬間を記録していった。

 母は困惑した表情を浮かべたが、それでも静かに口を開いた。

「娘なら、二時間前にはすでに出国しましたわ」

 ジュリアンの心臓が激しく跳ねた。「行った? どこへ?」

 母は彼の突然の激昂に唖然としていた。

「幼馴染の婚約者、クリストファー・ヘイズと共に、結婚式の準備に行きましたけれど」

 ドカン――

 ジュリアンの耳元で、まるでエンジンが爆発したかのような轟音が響いた。

 結婚式?

 クリストファー?

 そんな馬鹿な。

 あの愚かな女は、這いつくばるようにして彼を愛し、彼のためなら遺産すら放棄しようとしていたというのに――どうして急に手のひらを返して、他の男と結婚などできるというのだ?

「嘘をつくな!」

 彼は咆哮した。

 母は、充血して赤く染まったジュリアンの目を見て、まるで狂人でも見るかのような視線を向けた。

「ブラックウッドさん、気でも狂いましたの?」

 ちょうどその時、一人のウェイターが群衆を掻き分け、手にした黒い封筒を差し出した。

「失礼いたします。この中で、ジュリアン・ブラックウッド様はいらっしゃいますでしょうか?」

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