第12章

そう言い切ると、林田知音は振り返りもせず外へ出た。

目黒家の邸宅は川市の高級住宅街にある。とはいえ一軒一軒の間隔が広く、知音自身も長らく人付き合いを避けてきたせいで、近所に会っても挨拶を交わす相手などほとんどいない。

もともと整った顔立ちに、若い頃は芸術を学んでいたせいか、ただ歩いているだけでどこか澄んだ空気をまとっている。――けれど、そのサングラスの奥にある、ぐちゃぐちゃに絡まった思考も、赤く腫れた目も、誰にも見えない。

目黒家を出る姿は、たしかに格好はついた。けれど、こんなに長い間、本当に「出る」という選択肢を考えたことがなかったのか。

らいちゃんは鎖で、夫は希望だった。いつだっ...

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