第21章

「大島さん? 大島さん……」

野呂雨芽はベランダにうずくまり、階下の庭で草花の手入れをしている大島に二度声をかけた。だが返事はない。それが癇に障ったのか、彼女は苛立たしげに声を張り上げる。

「大島さん! どういうつもり?! 聞こえないふり?」

大島はホースを手に、花へ水をやっていた。いつもはこの庭を林田知音と一緒に世話しているが、今日は本人が不在だ。ならば、林田知音が丹精込めて育てている花々を代わりに見てやるのが自分の役目だった。

そのとき、耳障りな声が鋭く飛んできた。大島がはっとして顔を上げると、野呂雨芽が手近にあった本を無造作に放り投げたところだった。大島がとっさに身をかわさなけ...

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