第25章

野呂奥様は、林田知音がいたぶられる惨状を目にしても、瞳の奥にあるのは痛快さだけだった。

霞む視界に映るのは、人の皮をかぶった獣じみた連中――豺狼虎豹、そのもの。

知音はもう叫ばなかった。歯を食いしばり、湯気を立てる熱湯が自分の手に注がれていくのを、ただ見つめる。手首を押さえつけているのは、片側が屋敷の執事、もう片側が目黒雲月。

知音はわずかに顔を上げ、雲月を見た。

雲月の表情も硬い。視線が交わった瞬間、胸がひゅっと抜けたように鼓動が飛び、得体の知れない恐慌が走る。彼は野呂奥様の手を押さえ――

「おばさん、もうやめて」

やめて?

野呂奥様は、林田知音の白く整った顔を見て、妖にでも...

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