第26章

日野成謙は今日も夜勤だった。病院に着くなり、誰かが負傷者を抱えて救急へ駆け込んでいくのが見え、すれ違いざま彼は思わず足を止めた。

――目がおかしくなったのか。

誰を見ても林田知音に見える。そんな錯覚。

けれど、あの女の顔はもう、確かに日野成謙の胸の奥へ焼き付いていた。彼は踵を返し、その背を追った。

「先生! 先生はいませんか!」

野呂雨仁の叫びに、看護師が慌てて駆け寄る。

「患者さん、どうされました?」

「熱傷です。三十分ほど前に熱湯をかぶって……来るまでずっと氷水に浸してました。でも病院の入口で意識を失いました」

警察官の制服姿というだけで対応は早い。野呂雨仁は林田知音を処...

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