第28章

日野成謙が彼女の唇にそっと触れる。林田知音は反射的に首をすくめ、眉をきゅっと寄せたまま、自分の前に運ばれてきた炒飯の器を見つめた。さっきまで食欲なんてなかったのに、黄金色に艶めく米に刻み葱が散り、卵の香りがふわっと鼻先をくすぐる。次の瞬間、腹がぐう、と勝手に鳴った。

……お腹、空いてたんだ。

日野成謙は口角をわずかに上げると立ち上がり、水を二杯持って戻ってくる。そして器とスプーンを手に取り、当たり前みたいに彼女に食べさせはじめた。

林田知音だって分かっている。自分たちの関係は、もう十分に曖昧すぎる。ここで避けたり拒んだりしたら、かえって芝居がかったみたいで――

だから、口を開けた。日...

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