第57章

かつて若様が医学の道へ進むと言い出したときは、家の旦那様と大喧嘩になった。あの頃は、あれほど広い屋敷の中ですら、誰も息を潜めていたものだ。

だが今の若様は、医学の分野ですでに名を知られ始めている。いまさら諦めろと言ったところで、昔よりなお難しいはずだった。それなのに、あっさり承知した。――あの林田嬢のために。

「それから……」

日野成謙は一拍置いた。

「林田知音についても調べてくれ。母親が三上家の出だってことは知ってる。ただ、父親のほうは、これまでちゃんと聞いたことがない」

「日野様はご存じなかったんですか」

受話器の向こうで、坂東店長がまたしても驚いた気配を見せた。

「どうい...

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