第153章 須藤篠華の思惑

古川静弘は、羽鳥秋葉が羽鳥一弥を抱いているのを見つめた。小さな身体は彼女の胸にすっぽり収まり、もう舟をこぐ寸前だ。込み上げる名残惜しさをぐっと飲み込み、静弘は声を落とす。

「送っていく。夜は路面が滑る。危ない」

「結構です。新が送ってくれます。古川社長はお構いなく」

秋葉は考える間もなく切り捨て、抱いたまま外へ出ようとした。

だが静弘が一歩前に出て、彼女の進路を塞ぐ。まっすぐな眼差し。声には、わずかな懇願が滲んだ。

「秋葉……一度だけでいい。送らせてくれ。無事に家に着くのを、この目で見たいだけなんだ」

熱を帯びすぎた視線。濃い後悔と、縋るような期待。秋葉はそれを受け止め、眉間にき...

ログインして続きを読む