第173章 宇野若奈の取り入り

午後の陽が斜めに花屋へ差し込み、洋桔梗のほのかな香りがぬくもりをまとって店内に満ちていた。

羽鳥秋葉は小さなテーブルに腰を下ろし、羽鳥一弥のために葡萄の皮をむいている。丸みのある果肉を指先でつまみ、動きはゆったり。けれど瞳の奥には、溶けない警戒が澱のように沈んでいた。

コン、コン。

ガラス戸が二度、そっと叩かれる。力はほとんどなく、探るような遠慮が滲む。

秋葉が目を上げると、戸の向こうに宇野若奈が立っていた。きっちりしたオフィススタイル。手には洒落た紙袋と保温バッグ。眉を伏せ、従順そうに頭を下げている。前回、わざと火種を投げ込んできたときの勢いは、跡形もない。

――やっぱり、あんた...

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