第20章 他の男と夕食を共にする

温水言はアート界では名の知れた人物で、資産は億を優に超えるという。古川静弘と肩を並べるほどの大富豪だ。

もし彼女が花藝展を開き、温水言を会場に招けたなら――スタジオは間違いなく話題になる。そうなれば、あの手の攻撃や根も葉もない噂に怯える必要もなくなるはずだった。

電話をかける前、羽鳥秋葉は頭の中で何度も言葉を組み立てた。温水言は、そう簡単に動く相手ではない。

彼と秋葉の唯一の接点は、以前のオークション・ナイト。あのときは古川静弘が感情的になり、せっかくの挨拶も台無しになった。

少し前には、リゾート農場を経営するオーナーが宣伝目的で温水言に声をかけたが、彼は即座に断った――そんな話も耳に...

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