第28章 恩返しのためだけに

羽鳥秋葉は風邪をひいた。

夏川寧々が様子を見に来たとき、秋葉はちょうどアトリエの用事を片づけ終えたところで、ソファに小さく丸まっていた。身体には分厚い毛布。鼻をかんだティッシュは床に散らばり、鼻先は赤く、たまにひくっと引きつる。

「ちょっと、どうしたのそれ」

寧々は袋を二つ提げたまま入ってきて、慌てて荷物を床へ置くと、秋葉のそばに屈み込み、額に手を当てた。

「うん、熱はないね。顔色もそこまで悪くないし……でもこれ、風邪でしょ?」

秋葉の声は鼻にかかっている。

「大丈夫。ちょっと冷えただけ。温かい牛乳飲んだら、だいぶマシになったから」

「この時期に冷える?」寧々は疑わしげに目を細め...

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