第42章 両方を挑発する

古川静弘は足取りがやけに遅かった。オフィスへ戻るころには、顔色が痛みで真っ白だ。

  助手がぎょっとして駆け寄る。

「古川社長、どうなさったんですか。病院に——」

「いい」

 古川静弘は歯を食いしばって椅子に腰を落とし、苛立ちを飲み込むように言った。

「羽鳥秋葉は?」

「奥さ——」

 言いかけた助手の喉元に、古川静弘の鋭い視線が突き刺さる。助手は即座に言い直した。

「羽鳥嬢なら応接室でお待ちです」

「請求書を持ってこい。今すぐ決裁する。終わったらさっさと帰らせろ!」

 助手は一秒も無駄にせず手続きを取りに走った。内心では首をひねる。夫婦のはずなのに、どうしてこうもころころ...

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