第51章 病床の上で

須藤篠華はそっと息を吐き、音も立てずに部屋を出た。

扉が閉まった瞬間、さっきまで穏やかに笑っていた顔が、すっと別のものに変わる。

恐怖。――そして冷たい決意。

古川静弘が、あんな条件を「考える」余地を残した。即座に断らなかった。それだけで十分だった。

古川グループは、本当にもう持たない。

篠華の脳裏に、三年前の光景がよみがえる。あの日の決断も。

――ここを出る。二度と、あの男に足を引っ張られない。

……

古川静弘はデスクの上に残された名刺を手に取った。

飾り気は皆無。古臭くて、街角で配られるチラシみたいな安っぽささえある。

林田明辰。ユニバース・インベストメント・グループ...

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