第66章 口裏を合わせてあげられる

部屋の中が、唐突に静まり返った。荒く乱れた呼吸だけが、二人のあいだで交互に響く。

羽鳥秋葉は身を翻して起き上がる。胸はなお大きく上下していた。

「古川静弘、欲求不満なら須藤篠華のところへ行って。私をはけ口にしないで」

震える声でそう言ってから、彼女は唇をきつく結んだ。

「安心して。あなたのお母さまには言わない。明日の朝になったら、何事もなかったみたいに振る舞って、これまで通り芝居を続けてあげる」

そこでひとつ、深く息を吸う。

「だから――私に近寄らないで」

古川静弘は、殴られた頬の内側を舌で押した。片側がじんと痺れ、火照っている。羽鳥秋葉が容赦なく力を込めたのは明らかだった。

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