第8章
マーカスの指が引き金にかかり、力がこもる。銃口はまっすぐにブレイクの胸に向けられていた。
マーカスと私の間に、ブレイクが仁王立ちしている。その背中を、私はただ見つめていた。ぴくりとも動かない。胸の内で何かがねじれるような感覚――今まで一度も感じたことのないものだった。
私を破滅させたその人が、今、私のために死のうとしている。
「マーカス! それをよこせ!」ヘンリーが突然叫び、マーカスに飛びかかった。
七十歳という年齢にしては、ヘンリーの動きは俊敏だった。その両手がマーカスの手首に絡みつき、銃口を逸らそうと必死にもがく。二人は激しく揉み合い、マーカスの顔は力むあまり真っ赤になっ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
縮小
拡大
